ブログ

Kinarino Column ~スペインタイルの歴史を紐解く~

  • photo
    皆さんこんにちは。
    キナリデザインの立川です。
    早くも年末がやってきましたね。
    乾燥しているせいか、感染症が流行しているようなので、皆さん気を付けてくださいませ。

    さて今回のコラムでは、タイトルにあるようにスペインの建築装飾、レンガとタイルについてちょっと話そうかと思います。
    個人的に洋風建築は大好きな分野ですので、ほかにもロートアイアンや自然石などありますが、先ずはレンガからです。

    スペインにおけるレンガの歴史を遡ると、建築技術と文化の変遷を反映しており、古代から現代まで続く重要な建材として用いられてきました。
    その歴史を時代ごとに説明します。
  • photo
    1. 古代ローマ時代(紀元前3世紀~5世紀)
    ローマ帝国がスペインを支配した時代に、レンガの使用が広まりました。

    技術:焼きレンガ(opus latericium)の技術が広く採用され、耐久性の高い建築物が作られました。
    アーチ構造や水路、浴場、公共建築に使用。

    例:セゴビアの水道橋(石材とレンガの併用)。
    古代都市イタリカ(現在のセビリア近郊)の遺跡。

    2. 西ゴート時代(5~8世紀)
    西ゴート族がローマの建築技術を継承しつつ、レンガを使った建築を続けました。
    この時代は大きな建築技術革新は少なく、レンガの使用も限定的でした。

    3. イスラム時代(8~15世紀)
    ムーア人の支配により、イスラム建築がスペイン全土で発展。

    特徴:焼きレンガが主要な建材となり、装飾的なパターンに活用されました。
    幾何学模様やアラベスクの彫刻と組み合わせた装飾が特徴。
    軽量で扱いやすく、広い地域で使用。

    代表例:アルハンブラ宮殿(グラナダ): レンガと漆喰、タイルの融合。
    コルドバの大モスク: 壁やアーチにレンガが使用されました。
  • photo
    4. ムデハル時代(12~16世紀)
    概要: キリスト教徒が再征服を進める中、イスラム建築の影響を受けたムデハル様式が誕生。

    特徴:レンガを用いて複雑な幾何学模様を表現。
    レンガとタイルの組み合わせが特に重要。

    代表例:テルエル大聖堂の塔。
    トレドやセゴビアの教会群。

    5. ルネサンスおよびバロック時代(16~18世紀)

    ルネサンス時代:レンガの使用は引き続き行われたが、大理石や石材がより頻繁に用いられるようになりました。

    バロック時代:レンガが装飾要素として使われるようになり、漆喰や彫刻と組み合わせた豪華な建築が見られました。

  • photo
    6. 近代および現代(19世紀~現在)

    産業革命:レンガの大量生産が可能になり、都市部の建築に広く使用。
    マドリードやバルセロナなどの都市でレンガ造りの工業施設や住宅が増加。

    現代建築:歴史的なスタイルを再現する目的や、エコロジー素材として再注目されています。
    モダニズム建築でもレンガが取り入れられています。

    例:アントニオ・ガウディの作品(レンガとモザイクの融合)。

    これらの歴史が示しているように、スペインには質の高い粘土が多く、レンガ製造が盛んでした。

    そして、高温多湿な地域でも耐久性が高く、建物を涼しく保つ性質があります。

    更にもちろんレンガそのものが美的要素を持ち、建築装飾に使われることが多いのが特徴的で、ヨーロッパ全体で使用されています。
  • photo
    次はレンガとも似ていますが、タイルの歴史についてです。
    スペインにおけるタイルの歴史は、古代から現代に至るまで、地中海地域の多文化的な影響を受けながら発展してきました。

    1. 古代ローマ時代(紀元前3世紀~5世紀)
    ローマ人がタイル技術をスペインに持ち込みました。

    特徴:石やテラコッタ製のタイルが床材として使用され、耐久性と美観を兼ね備えていました。
    モザイク装飾が発展し、神話や自然のモチーフがデザインされました。

    代表例:メリダのローマ劇場跡やヴィラの床モザイク。



  • photo
    2. 西ゴート時代(5~8世紀)

    この時代には特筆すべきタイル装飾の発展は見られませんが、ローマ時代の技術が引き継がれました。

    3. イスラム時代(8~15世紀)
    イスラム教徒(ムーア人)がスペインを支配したことで、タイル文化が劇的に発展。

    技術と特徴: **アズレージョ(Azulejo)**の始まり:
    アラビア語の「al-zulayj」(小さな磨かれた石)に由来。
    幾何学模様、植物モチーフ、アラビア文字を含む精緻なデザイン。

    技法:Cuerda seca(乾式ロープ技法): タイルに黒い線を描いて仕切り、異なる色釉を使う技法。
    Lustreware(光沢技法): 金属的な光沢を持つタイルを作成。

    使用例:壁、噴水、庭園の装飾。
    アルハンブラ宮殿(グラナダ)はタイル装飾の代表例。
  • photo
    4. レコンキスタとムデハル時代(12~16世紀)
    キリスト教徒が再征服を進める中、イスラムの装飾技術が継続されました。

    特徴:ムデハル様式として、イスラムのタイル技術がキリスト教建築に融合。
    幾何学模様やカラフルなタイルが教会、宮殿、公共施設に使われました。

    代表例:トレドやセビリアの教会や宮殿。
    テルエルのムデハル建築群。
  • photo
    ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
    ここでムデハル様式についてもう一言。

    **ムデハル様式(Mudéjar Style)**は、スペインにおける建築と装飾のユニークなスタイルで、イスラム文化とキリスト教文化が融合したものです。この様式は、特に12世紀から16世紀にかけて発展し、スペイン全土で見られる特徴的な建築様式として知られています。

    ♢素材:主にレンガを使用したシンプルな構造。
    木材、タイル、漆喰などの装飾材料を多用。
    ♢幾何学的な装飾:壁や天井にイスラム風の幾何学模様や、アラベスクやスター模様などの細かい彫刻。
    ♢タイル装飾(アズレージョ):カラフルで幾何学的なタイルが壁や床に使用されます。
    ♢尖塔アーチと多葉アーチ:
    イスラム建築に見られる特徴的なアーチ形状。
    ♢天井の装飾:木製天井(アルトゥラヘド)が細かく彫刻され、豪華に装飾されています。
    ♢レンガの装飾的な使用:外壁や塔に緻密な模様をレンガで表現。

    ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  • photo
    タイルの歴史に戻って…

    5. ルネサンスおよびバロック時代(16~18世紀)

    ルネサンス期:イタリアルネサンスの影響で、写実的なデザインが普及。
    人物像や風景を描いたタイルが登場。

    バロック期:華やかな装飾タイルが宗教建築に採用され、壮麗な祭壇や壁画としての役割を果たしました。

    6. 近代(19~20世紀)
    産業革命:
    タイル生産が機械化され、大量生産が可能に。
    スペインのタイル産業の中心地である**バレンシア州(カステリョン県)**が発展。

    モダニズム建築:
    ガウディをはじめとする建築家がタイルをアートとして使用。

    例: バルセロナのグエル公園のモザイク装飾。

  • photo
    7. 現代(20世紀後半~現在)

    現在の特徴:伝統的技術を守りつつ、デジタル印刷や新素材の導入でデザインの多様性が広がる。
    タイルは建築装飾だけでなく、インテリアやアート作品にも使用。

    生産地:スペインのタイル生産は主にバレンシア州に集中。
    セビリアも伝統的な手作りタイルの文化を維持。

    スペインのタイルの重要性として、

    〇多文化の融合:タイル技術は、イスラム、キリスト教、ルネサンスの文化が融合した結果。

    〇美学と実用性:カラフルで耐久性の高いタイルは、装飾性と機能性を両立。

    〇地域的な多様性:地域ごとのデザインや技術の違いが魅力。
    などがあります。
  • photo
    スペイン国内で有名なタイル装飾建築をあげるとすれば、

    〇アルハンブラ宮殿(グラナダ)
    タイル装飾の最高傑作。

    〇セビリアのアルカサル
    アズレージョの多用。

    〇バルセロナのグエル公園
    モダニズム建築でのタイル利用の例。

    などが有名ですね。
  • photo
    特に、グエル公園におけるタイルの特徴としては、
    ガウディの哲学が大いに反映されています。

    ①再利用と創造性:ガウディは廃材を再利用し、環境に優しい設計を実現。
    素材の制約を創造的に乗り越えることで、独自性を生み出しました。

    ②視覚的なインパクト:タイルのカラフルな装飾は訪問者の目を引き、観光客に感動を与えます。
    バルセロナの文化や美学を象徴。

    ③耐久性:タイルはバルセロナの気候に適応し、耐久性が高い建材としても優れています。

    トレンカディスによるタイル装飾は、グエル公園全体の特徴的な要素であり、世界中から訪れる観光客を魅了しています。
    この技法は、ガウディの他の作品(サグラダ・ファミリアやカサ・バトリョ)でも見ることができますが、グエル公園での利用が最も象徴的です。

    いかがでしたでしょうか。
    さすがという感じですよね。今回はスペインの話でしたが、今後もいろいろ集めていきたいと思います。

    ++++++++++++++++++++
    千葉、千葉市の新築外構・外構リフォーム・お庭ならおまかせください。
    キナリデザインは外構・ガーデン・エクステリア専門のデザイン事務所です。
    あなたのためにオンリーワンのガーデンデザインをご提案いたします。

    施工実績では千葉県内を中心に行った新築外構・エクステリア・ガーデンの当社実例をご覧いただけます。創業より40年以上の歴史を誇る多田工業(株)と共に、責任を持って施工いたします。
    ++++++++++++++++++++
Page TOP
お電話でのお問い合わせ メールでのお問い合わせ